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Great Cossy Mountain LOGO shirt

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鹿の女

Great Cossy Mountain

山に分け入って今日で二週間が経つ。

一度、補給のために街へ降りた。
コースを外れ、林道を一時間歩き、さらにバスで一時間。
その車中、僕の薄汚い恰好は、ありきたりの田園風景しか目に入ってこない乗客にとって格好の暇つぶしになったはずだ。
途中、「日帰り温泉」の看板が目に入り、思わず停車ボタンを押しそうになるが踏みとどまった。
街の蕎麦屋で腹を満たし、一週間分の食料を調達したらそれ以外何もすることが無く、またバスに飛び乗り山へ戻った。
すでに僕の居場所は街には無かった。

三十年前の山行記録と地形図から探し当てた忘れられた山道。
その道とは言えないほど荒れ果てた道もこの沢で終わっていた。
あとは沢沿いに少し下るとガイドブックにも載っている立派なトレイルにぶち当たる。
タープを張り荷物を整理し、ふと顔を上げると対岸に雌鹿が現れ草陰から俺の顔を凝視していた。
僕は目線を外さないようにゆっくりと川岸に近寄り、その場に腰を下ろした。

彼女は言った。

「みんなは嫌いって言うけど、私は好きよ。人。」
「そうか。君は昔、人だったのかもしれないね。」
「あなたは、鹿だったかもしれない。」
「あるいは、僕達は熊だったかも。」
「人も鹿も熊も、人が勝手につけた呼び方にすぎないけれど。」

僕は目を閉じて一回深呼吸をし、再び目を開けた。
対岸の雌鹿は、姿を消していた。そのかわりに俺の隣には綺麗な黒髪の白い肌の女性が座っていた。

「俺、臭わない?」
「正直臭うわね。でも私、その匂い好きよ。」

谷の下流側から突然強い風が吹く。静かに揺らめいていた木々が突然ざわつき、何枚かの若葉が風に舞った。
彼女は風と共に消えていた。

僕は着ていたTシャツ脱ぎ、沢で丁寧に洗った。染み込んでいた汚れが洗い流され、本来の色が姿を現した。
きつく絞った後、丁寧にしわを伸ばしタープを張っていたロープにかけて干した。

夕食の準備をするにはまだ早い。僕はクッカーに沢の水を汲み火にかけ、インスタントコーヒーを淹れた。
コーヒーを飲みながら持ってきていた『モカシン靴のシンデレラ』を読み始めた。
開拓者の白人から、『シンデレラ』の話を聞いた北米先住民・ミクマク族が、
そこに登場する着飾ることでしか自己表現できない女(シンデレラ)と
見た目の美しさでしか相手を評価できない男(王子)のその薄っぺらい思考に対する、アンサーストーリーと言われている。

本を閉じ、ぬるくなったコーヒーを飲みほした僕は腰を上げ、干してあったTシャツを着た。
Tシャツは既に乾いていた。

綺麗になったTシャツだが、そこにあった汚れは僕の目にはしっかりと見えていた。
良い旅だった。街に戻ろう。

国内のUL/MYOGシーンの草分け的存在でもあり、かつ異端なプロダクトを発信する孤高の男・大越智哉氏主宰するGREAT COSSY MOUNTAIN。
そのブランドロゴを刺繍で冠したTシャツです。Gコ山同様、シンプルでストイックな仕上がりになっています。

HEAVY WEIGHT SHIRT
COTTON 100%

ご注意
*染めを含む加工を施しているため、実寸サイズには2〜3cmの誤差が生じる可能性があります。ご了承下さい。